- 過去に導入した情報化システムは90%活用されていない
- 社員の多くは情報を探すのに就労時間の25%を費やしている
- 企業の知的財産の60%は電子メールを含めた個人のPCに埋もれている
はじめに
2008年はサブプライムローンシステムの破滅に端を発し、100年に一度有るか無いかの極度な世界経済の混乱の内に年を終えた。今年もその影響はしばらく続くと思われる。Vの字に落ち込んだ景気は立ちあがりも早い可能性もある。その回復の波に乗れるか、乗れないかは、企業の知的財産情報化が重要な鍵となる。特にプロジェクト、プロセスマネジメントに柔軟性と拡張性を持たせ、知的財産蓄積の重要性を全社員が把握している必要がある。
本来ビジネスとは
景気経済、顧客ニーズの変化に合わせ、企業には常に新商品を創造していくミッションがある。大手企業で有れば有るほど、人、物、金、P.D.C.A.を会社経営の基本としている。バブル崩壊に近い今回の変革で反省すべきことが幾つか露出する。一つは人、物、金が有れば確かに製品は出来上がる。しかし人、物、金があっても顧客の消費者心理を掴むことができない。中小の企業を問わず不況下でも成長している企業の共通点は、知的財産の有効活用と、顧客のニーズを商品化し、お客様の購買意欲をつかむこと。商品の販売方法を確立することを迅速こなせる会社である。これを『ビジネス』と言う。
1. 製造業の知的財産構築のための構成三要素
■作業者(人間)
製造業が知的財産を蓄積し、また有効に活用するには作業者(人間)、開発ツール、エンジニアリングの三要素が基本構成と成る。作業者の役割には①プロジェクト計画、②見積管理、③進捗管理、④要員管理、⑤コスト/生産性管理などがある。プロジェクトリーダにとって、過去の経験、要員とのコミュニケーションは企業の財産である。
■開発ツール
開発ツールとしては、各種PC上で動くソフトウェア、加工機械などがあるが、重要なのはプロセスマネージャーとの連携(ToDoリスト)、MS-Excelとの連携(レポート出力)等になる。過去のデータ、シミュレーションソフトを常に更新することで知的財産として蓄積できる。
■エンジニアリング
エンジニアリング作業には、プロジェクトの課題に対し、過去蓄積した知的財産の活用と、新たな創意工夫が必要となる。企業が特徴を出すには、プロジェクト全体の80~90%のエネルギーがこれに必要となる。
2. プロセス改善活動概要
■プロジェクト管理のねらいは、作業全体の可視化向上
①プロジェクト管理の質的向上
②【中期目標】ビジネスゴールの達成
③PMの組織能力向上と作業のモデル化
④定量的データに基づく予定、実績の管理
Q:手戻り改善による品質向上
C:見積り精度向上による正確なコスト予測
D:タイムリーなアクションによる納期管理
3. 現状の課題
■作業モデル化:成果物を何時、何処で、誰が作成するかの明確化
① 組織プロセス重視:組織レベルでプロセスを改善する仕組みが弱い
② 組織プロセス定義:組織プロセス資産が確立されていない
③ プロジェクト計画策定:プロジェクト全体計画を策定するプロセス及び手順書が無い
④ 構成管理:構成監査(設計書、ライブラリが正しい常態かチェックすること)が不十分
- 成果物と作業項目の対応付け、追加、分割
- レビューの種類を決定、実施箇所の変更
- 作業の役割の明確化(責任者、作業者、レビューア)と実施順序の変更
■進捗管理モデル:進捗管理単位、様式、進捗率算出方法統一
- 様式、進捗管理単位の統一
- 様式に進捗遅れの度合い(週)を追加
- 進捗率:計算方式を規定、進捗データを一元管理に
■品質管理モデル:承認と手戻りを把握する仕組み
■構成管理モデル:ドキュメントの整理、管理方法の統一、
- ドキュメントの分類実施と仕様変更毎に変更ドキュメントを管理
- 資産の一元管理による情報資産の共有化
- 変更管理による連絡ミスの防止、並行開発、リリースミスの防止。
4. マネージメントツールの機能概要
知的財産を蓄積するには、マネージメントツールを有効的に使い、有機的に管理していく
ことが重要です。そのためには誰もがシステムを理解でき、プロセスが可視化できる簡単
なツールが必要になる。(図2)
5. SaaSサービスによるプロジェクト管理の具現化
■プロジェクト管理SaaSサービス
プロジェクト管理をするには、総合管理システムを利用すると便利である。例えば、米国 Knowledge IT社が提供する「ナレッジITプロジェクト管理システム」は、NASAプロジェクト、アメリカのロッキード・マーチン社の防衛技術、日本の大手企業90社へ導入した経験を生かし、一般業界向けに、28モジュール(各3Type)合計84以上のアプリケーションのSaaSサービスである。(図3)
■SaaSサービスの特徴
① ソースコードの変更が不要:全てメニュからの設定のみ
② ノン・コンパイルで使用:コードの修正・変更無し
③ ノン・エンジニア:メンテナンスが容易。事務の方でも出来る
④ 二重入力が無い:アセットのインポート、エクスポートが可能
⑤ 都度入力が不要:一回入力してあればライブラリから引用出来る
各種機能
Intelligent Hub:
必要な企業情報・知識(経理、人事、予算、プロジェクト管理、予実管理・・・)をダイナミックに結合させ、改革を推進するツール。情報共有化基盤として、各ツールで使用する以下の情報の共有化を実現。EXCEL,WORD, Power Point, PDF・MS-Project・CSV・内部形式データ(画面情報、セキュリティポリシー、アクセス管理情報等)
Project Management:
豊富な実績からのノウハウを集大成し、日本企業のプロジェクト管理の現場実態に適合。プランニング・タスク管理(WBS,プロジェクト進捗)・予実管理・成果物管理
Performance Management:
過去の経験を生かし、効率よく、パーフォマンスよく会社のマネジメントに適合
Business Dev. Manager:
営業・ポートフォリオプランニング・予実・企画管理
Human Res. Manager:
リソース時間管理・人材/教育管理・リソースコスト管理・取引先管理・スキル管理・キャパシティ・BPO可能性チェック・サプライア管理
Workflow Manager:
商談進捗管理(引き合/見積/内示/売上、辞退/逸注・・・)・ワークフロー管理 (レビュー・承認進捗管理、レビューワー管理、会議通知等)
ステーキホルダ・PMO用:
KPI/ダッシュボード管理・全社PRJ管理・全社要員・キャリア管理・全社配員 ・スキル管理・イベント管理
Business Object Manager:
KPI定義・オブジェクト登録/検索/改版等・アクセス管理・バックアップ
フォレンジック管理(FM):
ロッグ管理・トレース管理・イベント管理
今後の課題
プロジェクト管理、プロセス管理は企業の知的財産形成において欠かせない仕事となる。
過去に導入した情報化システムは90%活用されていない。現場で求められているシステムは、誰もが簡単に操作ができ、日常業務に溶け込んだシステムが重要である。まずはSaaSサービスなどを利用した、スモールシステムから開始することをお薦めする。
【記事】株式会社エフエイオープン
【顧問】藤平 實(ふじひらみのる)