■はじめに
過去100年で多くの電子、電化製品が開発され、その完成度が年々向上されてきた。19世紀末に発明された電話では、製品として成熟するまでに約100年間かかっている。テレビ、コンピュータのメインフレームでは約50年、そして携帯電話のような最近の製品では急速にその期間は短くなり、デジタルカメラと共にTime-to-Marketの代表的な製品となった。一方これらの製品に含まれる半導体の使用比率を見てみると、テレビで約20%であったものが、携帯電話では70%になっている。半導体はこれらの製品の性能、機能向上に大きな役割を担っており、更に利用率を高めることも可能にしてきた。より短くなる製品のライフサイクルに対応するためには、製造プロセス、工場建設、設備立ち上げ、製品立ち上げなどの全ての面にわたってのスピードと、変化の激しい市場への柔軟な対応を可能にする情報化が求められている。
1. 半導体製造装置とは
半導体チップの製造工程は大きく二つに分けられる。
1)前工程とは
一般的な半導体素子はシリコンウエファ上に電子回路を形成する。何も加工していないベアウエフアを洗浄し、拡散炉で薄膜するとこところからプロセス加工は開始され、ウエファ上に電子回路が完成するまでの工程が前工程である。最近では一枚のウエファサイズが直径300mmに達し、取り扱いもかなり難しくなってきた。
① 主な製造装置名
拡散炉、ウエットステーション、コータデベロッパー、メタルCVD、イオン注入機、エッチャー、 スパッター、アッシャー等
② 前工程の特長としては
1) 超クリンルームが必要
コンタミネーション(ゴミとは異物・金属イオン・有機物)を避けるため超クリンルーム内での作業となり、ゴミを絶対に発生させない装置が必要
2) プロセス装置で高真空が必要
高真空(1x10・-7乗ヘクトパスカル)装置が必要。イオン注入機、エッチャー、スパッター、アッシャー装置等では正確にイオンを注入したり、安定したプラズマ状態を得るため、真空度の高いプロセスチャンバーが必要である。
③ 装置の基本構成
装置のコントローラは三種類に分けられる。一つは化学的反応、物理的現象を管理するプロセスコントローラで、デバイス製造に必要なレシピィの管理を中心に働くコンピュータシステム。二つ目のコントローラはウエファ搬送を含めた反応プロセスに必要なファシリティ(反応ガス,薬液、窒素ガス)のコントロールである。三つ目のコントローラは
情報管理用である。
2)後工程とは
ウエファ上に電子回路が出来上がり、表面にゴミ避けのフィルムをコーティングした状態から
半導体チップとしてセラミックやプラスティツクでパッケージし、テスターで良品として検査を完
了するまで。工場は前工程とは別の場所にあるケースが多い。
① 主な製造装置名
ウエファプローバ、ダイサー、ボンダー,モールドマシン、レーザマーカー、ハンドラー、各種計測機器等
② 後工程の特長としては
1)クラス1000~10000程度のクリンルームで良い
2)プロセス制御はなく、主に機械制御が中心
③ 装置の基本構成
プロセスコントロールが不要だがXYステージをはじめ短時間で多くの処理をするため、PLCレベルのコントローラが必要。又300mmφウエファから1400個近いDRMチップが取れるので処理する装置は各処理能力にあわせ数十台となり、装置間の情報管理が重要になってくる。そのため最近ではプログラム可能なロジックコントローラPLCから、通信機能,大容量メモリー,更に高速CPUがあらゆるアプリケーションに対応可能な汎用オートメーションコンポネンツPAC(Programmable Automation Controller)の存在が重要になってきた。
2. 半導体製造装置において準拠すべき評準とは
SEMIのオープンスタンダード化は装置メーカ、デバイス製造メーカ双方にとってシステムイン
テグレーションに要する時間とコストの削減に不可欠であり、専用インターフェイスを受け入れ
るケースは更に少なくなってくる。今後標準化において下記のニーズがより強くなる。
① より迅速な標準化の採用
② 標準化技術の迅速な実装支援
③ API標準の整備
④ 制御機器レベルの標準化によるシステム構築の簡素化
参考:
*すでに標準化されているもの
①ウエファレベルのトラッキング及び制御標準
②ウエファカセットキャリア管理標準
③パラレルI/Oインターフェース
④SECS-Ⅱ、GEM、
⑤装置性能トラッキング標準
*標準化作業中
⑥ウエファカセットキャリアID標準
⑦APC、エラー検知、クラス定義、総合計測システム、EES、e-Diagnostics
*標準化が必要とされているもの
⑧標準的なプロトコール
⑨標準化されたデータフォーマット、データアクセス、API
3. 半導体製造装置の情報化クラスターツールコントローラ
SEMIのスタンダードに準拠する情報化システムは、PC上で動作するエンジニアリングソフトウエアで、SECS/GEMにかかわる標準インターフェイスであるEDAポートを実装したデータインテグレーション機能と、オブジェクト指向の制御プログラム開発環境との二つの主機能が、ジョブ管理、レシピ管理、搬送、アラーム管理など、半導体製造装置に機能として必要である。
4. 半導体製造装置の情報化システムとは
300mmΦ65nm時代の最先端製品の量産を支えるには、デバイスメーカサイトにある装置の短期立ち上げ、安定稼動はもちろん、予防保全、プロセス支援を含めた広範囲なサポートを提供するe-Diagnosticsが必要となる。その具体的な成果としては(1)平均故障修理時間MTTRの短縮(2)装置稼働率の向上(3)保守管理費の低減が可能である。また最近では(4)として製品出荷後発生する品質保証の関する製造過程のトレーサビリティ管理が重要な役割になってきた。
5. e-Diagnostics
①e-Diagnosticsとは
e-Diagnosticsとはネットワークを介してデバイスメーカの生産拠点にある製造装置に直接アクセスし、遠隔診断、メンテナンスをすることで保守作業時間と、経費を削減する技術です。近年日本の装置メーカにとって、約70%の顧客の製造拠点が海外となった状況下では顧客も、サービスを提供するベンダー側にとっても、物理的な移動時間を必要としないで現地サイトの装置の診断、解析、メンテナンス作業の実施が約半数インターネットを介して実施可能である。
②e-Diagnosticsガイド
2000年ISTMから提案され、デバイスメーカ、装置ベンダー双方の意見を取り入れ、四段階のレベル分けが行われた。現時点ではその三段階までを可能にしている。
③ e-Diagnosticsの今後の課題
半導体チップ製造プロセスは化学反応、物理現象の一部を捉え、良いとこ取をするプロセスです。そのため製造プロセスのパラメータ管理が最も重要となる。材料の品質、製造部品の経時変化、プロセス条件のちょっとしたばらつきが歩留まりに大きく影響してくる。実際に管理が必要なパラメータ要素は1000アイテムにもなる。最近の傾向としてバッチ処理で生じる脈流的に製品が団子状態になる製造方法から、マルチチャンバー化した連続運転型のインラインシステムが支流になると、各コントローラの管理も益々マルチタスク機能が必要となり、高速で処理ができるOS、CPUをもったPCが必要となる。このような状況になると職人の技をはるかに超え、標準化された情報管理が益々大きなアポイントとなります。
【用語の説明】
SEMI (Semiconductor Equipment and Materials International)
GEM (Generic Equipment Model)
EDA (Equipment Data Acquisition)
MTTR (Mean time to Repair)
ISTM (International SEMATECH)
EES (Equipment Engineering System)
【記事】株式会社エフエイオープン
【顧問】藤平 實(ふじひらみのる)